焼きすぎた食パン

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制作:下道基行
年月日:2016.1.5
サイズ:301×317×10mm (2枚セット)
素材:食パン、フキサチーフ
場所:愛知県

"overroasted bread"
creater:Motoyuki Shitamichi
date:5.1.2016
size:301×317×10mm
material: bread
place: Aichi Japan


朝、ホットサンドを作ろうとした妻が、片面を焦がしてしまった。食べるのを諦め、もう片面もじっくり焼きあげ、炭にした。

【エピソード1】
2015年夏、北海道を旅行しながら訪ねた羅臼町郷土資料館に展示された真っ黒の出土品と出会った。それらは、案内をしてくださった涌坂周一さんが昭和57年に発掘(松法川北岸遺跡)、復元を行なってきたもの。アイヌ文化に多くの影響を与えたというオホーツク文化の謎に満ちた豊かな生活を伝える遺物として国の重要文化財に指定された。
この発見で非常に興味深いのは、発掘された竪穴式住居跡が火災にあっていたこと。1300年以上の時間を越えて木製品が現存していた理由が、火災により室内が偶然炭焼き窯のようになり木製の生活品たちが炭化したからだという。もしも炭化していなかったら、他の遺跡同様に木製品たちは腐敗して朽ちていたそうだ。

偶然に焼けてしまったことによって、その時の些細な日常生活は凍結され未来への歩みを始める事になった。

【エピソード2】
焦がしてしまった食パンをもう片面も焦がしてできた”オリジナル”。”オリジナル”はホットサンドとして挟んで焼いた跡やチーズの欠片が残るが、完全に炭化できていない可能性もあり表面はフキサチーフ(樹脂)でコーティングした。さらに、食パンを一枚使用し、完璧な炭化の食パンを制作。これを”レプリカ”とする。こちらは、表面に何も施していない。今回は”オリジナル”と”レプリカ”両方をセット。

【エピソード3】
食パンは絵を描くことと密接に関わっている。
高校の2年生の時、はじめて食パンを“使った”。木炭デッサンが受験で必須である油絵学部を受験する僕には食パンは“食べるもの”でもあり“使うもの”だった。木炭デッサンを行なう柔らかい素材の用紙は消すゴムでは硬過ぎて傷つけてしまうため、昔から今でも木炭デッサンには食パンを使う。はじめて食パンを買って、中の白いフワフワのところを少しつまんでこねて“使った”ときの罪悪感と新しい感覚を覚えている。